Impossible Foods:創業者Prof. Patrick O. Brown (スタンフォード大名誉教授)

Impossible Foods:創業者Prof. Patrick O. Brown (スタンフォード大名誉教授)

日本人記者が、Impossible Foods社を訪問・見学・試食のプレスツアーに参加した際のCEOパトリック・ブラウン(現会長)との単独インタビュー記事。パトリック・ブラウンの生化学者としての業績、起業までの経緯、志などが記載されていて、興味深い内容と感じました。

米国・シリコンバレーでは今、植物を主原料とする人工肉の開発・製造販売を行うスタートアップ「インポッシブルフーズ」が急成長中だ。(中略)同社の創業者兼CEOは、この人工肉を広く普及させることで「温暖化の危機から地球を救うことができる」と豪語する。いったい、人工肉と気候変動がどう結びつくのか。同社を訪れ、CEOをインタビューし、人工肉を試食した。

Impossible Foods社の創業者は、著名なスタンフォード大学名誉教授のPatrick O. Brown。彼は、HIVウイルスの感染メカニズムを解明し、DNAマイクロアレイ(DNAチップ)を開発したという生化学者。オープンアクセスジャーナルPLOS(Public Library of Science)の共同創設者としても知られる。スタンフォード大の彼の研究室が開発したcDNAマイクロアレイが、スタンフォード型DNAマイクロアレイとされている。2009年に、サバティカル休暇中に、「これまでのスキルとキャリアを、世界に対して最も貢献できる方法は何か」と考え、meat alternativeを開発することによって、地球持続性問題を解決しようと、2011年にImpossible Foods社を起業したとのこと。

Pat Brownは、畜産業は世界全体の温室効果ガス排出量の15%について責任があり、新鮮な水の25%をも使用しており、世界中の土地の半分以上が牧草地など畜産業用に利用され、地球全体のCO2吸収力も低下させているとの見解を基に、「畜産業、中でも牛を飼うことは最も深刻な環境問題だ」と考えているとのこと。

Pat Brown自身は長年の菜食主義者で、人類が肉食への欲求を絶ち難いことも熟知していて、「ならば科学の力で、動物の肉よりもおいしくて栄養面でも優れ、価格も安い人工肉を作り出せば、消費者はそちらの方を好んで買うようになり、畜産業は自然に消滅。地球は危機から救われるだろう」とインタビューに答えたとのこと。

インポッシブルフーズ社製人工肉のレシピは、以下の通り。

【第1世代と第2世代のレシピの違い】――――――――――――
Impossible Burger OLD ingredients list: water, textured wheat protein, coconut oil, potato protein, natural flavors, 2% or less of: leghemoglobin (soy), yeast extract, salt, soy protein isolate, konjac gum, xanthan gum, thiamin (Vitamin B1), zinc, niacin, vitamin B6, riboflavin (Vitamin B2), vitamin B12.

Impossible Burger NEW ingredients list: Water, soy protein concentrate, coconut oil, sunflower oil, natural flavors, 2% or less of: potato protein, methylcellulose, yeast extract, cultured dextrose, food starch modified, soy leghemoglobin, salt, soy protein isolate, mixed tocopherols (vitamin E), zinc gluconate, thiamine hydrochloride (vitamin B1), sodium ascorbate (vitamin C), niacin, pyridoxine hydrochloride (vitamin B6), riboflavin (vitamin B2), vitamin B12.
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植物タンパク質をベースにしたmeat alternativeであるが、特筆すべきなのは、大豆のヘムタンパク質であるleghemoglobin を添加している点である。leghemoglobin は、肉様の赤色を製品に与えているとともに、加熱した際に、肉臭:肉が焼ける時の匂いを発する要因になっているとのこと。しかも、そのleghemoglobin は、遺伝子組換え酵母を用いて製造したものとのこと。GRAS認定の際、安全性について問われるも、学術的なロジックを展開、FDAから問題なしのコメントをもらった模様。これまで、レストランのみでの提供だったが、小売り販売も開始するとのこと。家庭で焼いた時に、肉臭が漂うのは大きな魅力かもしれない。一方で、消費者が、合成生物学的な手法で製造したleghemoglobin をどう捉えるのか注目したい。生産菌は除去されており、DNAフリーとなっていれば、消費者が懸念するような要因はないだろう。その点に対する消費者の理解が進んでくることを期待する。

Impossible Foodsが小売販売開始に向けて、DropboxのCEOを務めた後、Googleで数年間senior management rolesを務めた Dennis Woodside氏を社長に迎え、創業者Dr. Pat Brownは会長職に就いたとのこと。

food start-up のために多額の投資(almost $400m in debt and equity)をしたので、それに見合うリターンが生まれるはず(生むためのCEO交代)。急成長しており、販売およびマーケティングチームを構築し、製造を拡大などを整備すことが新CEOの役目となる様子。小売販売に向けて、様々なひき肉料理に対応可とする製品に仕立てるとともに、グルテンフリーにするなど、よりニーズに合うようレシピを変更した“Impossible Burger 2.0”を開発とのこと(前述のImpossible Burger NEW ingredients listにあるものを成分とする製品)。

 

肉は生物由来の物質に過ぎず、肉と同じような種類の分子は植物の中にも存在する。もしも神戸牛のうまみを作りだしている成分が何か分かれば、植物の中からその物質を見つけ出し、それらを混ぜ合わせることで、外観も質感も味も香りも同じものを作り出すことができる

このようなコンセプトで、製品開発をしているとのこと。知恵を使って作り上げるという姿勢。このようなアプローチが受け入れられて欲しいと思う。化学的なものは全て危険だと判断してしまうのではなく、本質的に危険なのか否かで判断し、その判断を受け入れる素地が出来上がっていくことを期待したい。